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2009年08月07日

4.覚悟(1)


「柿さん。仕事の口、無いですかね。」新田が照れくさそうに切り出した。
 柿さん・・・。パトカーの上に登って100名以上の暴徒を束ねていたあの大柄な男のことだ。
 そして新田こそが、柿崎の隣のパトカーの屋根に上って柿崎と同様に暴れていたあの「小さな少年」だった。
「仕事?どんな?」柿崎がピンと来ない表情で聞き返した。
「食えれば。家族3人分ですけど。」新田が答えた。
「役所はどうした?」
「円満・・・退職ですかね。体の良いリストラとも言えるかな。」少しだけ複雑な表情で新田が答えた。
「龍。天下り先ならいくらでもあるだろ?例えこのご時勢でもよ。」柿崎が不思議そうに言った。
「ちょっと・・・やりすぎたみたいで。」新田はそう言って頭をかいた。


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4.覚悟(2)


 半年前。ちょうど新田が経済産業省の政策企画室長室に3日連続で座っていた直後に遡る。
 省内では、新田の昇進有無に関して噂が絶えなくなっていた。
 そんなある日、夜の帰宅途上で新田は背後から何かで頭を殴られた。
 新田が再び気付いた時、彼は病院のベッドの上にいた。
 頭は脳挫傷、他にあばらの骨3本と右足のすねの骨が折られていた。
 全治3ヶ月。
 ベッドの傍には妻のみくと、3歳の娘のあおいが付き添ってくれていた。
「意識が戻ったら、警察の人が話したいって・・・。」妻のみくが新田に告げた。
「そうか・・・。」
 すでにその時、新田は、『プロだな・・・。』と察していた。
 そして、『犯人も捕まえられないだろうな。』そう考えながら、
「心配かけたな・・・。」と、妻と娘に笑顔で言った。
 同時に新田は、
『仕事も失ったか・・・。この先さらに心配かけることになるな・・・。』と悟っていた。


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2009年08月08日

4.覚悟(3)


 これ以上、新田に力を持たせるのは危険だと感じていた者は少なくなかった。
 今回の異動の噂は、大臣サイドから流れていた。が、省内トップでは危機感を感じていた。
 与党内部でも、まだ若い一室長に白羽の矢を立てるのは時期尚早という意見が、非公式に流れていた。
 これまでであれば、妻のみくの実父が調整に立っていたかもしれない。みくの実父は大蔵省で大臣官房経験を勤め、大蔵審議官を2年ほど経験して退官していた。が、2年前にすでに他界していた。
 結局、新田昇格を推し進めていたのは、極めて偏った一部の人間だけだった。
 新田自身もこういった動きは早い段階で察知していた。
 そして、異例尽くめの上に、多くの人間に大きなしわ寄せを与える人事だと危惧していた。
『甘かったな・・・。』
妻と娘が帰宅したあと、病院のベッドで新田は思った。
 危惧すべきは自身への警戒だったとは、さすがに気付けなかった。


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