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2009年08月08日

5.別離(1)


「龍よ。お前、勉強しろ。」
面会室の窓越しに、柿崎が言ったのはもう16年も前に遡るだろうか?
 二十歳だった柿崎は、すすきのの大乱闘のあと送検され、傷害事件の審判を受けているあいだ、札幌拘置所に収監されていた。
 同じ乱闘現場から柿崎に追い返されて、警察の捜査からもノーマークになった新田が、その柿崎に面会に行ったときのことだ。
 面会の際、新田は親族ではないので正当な事由が求められた。
 が、道立札幌南川高校の学生証と、「不良に因縁をつけられて困っているときに、救ってもらったお礼に来たのです。」というもっともらしい理由で許可を得ることができた。
「お前、17だろ?あと2年あるんだから、今からでも東大くらい行ける筈だ。そろそろ俺のマネは卒業して、自分の力だけで大きい事やってみろよ。」柿崎が落ち着いた声で、そしてまじめな表情で龍に告げた。
「柿さん・・・。なんで俺、いつも柿さんから遠ざけられちゃうの?」龍は、納得がいかない気持ちと、寂しさの入り混じった表情で聞いた。
「遠ざけてはいねーよ。」
「今回だって・・・。」
「お前、ここに入りたかったのか?」
 柿崎が厳しく言った。そして、返答に窮する新田に、
「お前に『信念』があったら最後まで付き合わせたかもしれないがな。でもな、今回の件は俺の信念のために始めたことだったからな。」冷静に柿崎は続けた。


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5.別離(2)


「お前達には手伝ってもらったに過ぎないんだよ。」
『信念?』
 今回の大乱闘が、いつもの暴走、暴力沙汰とどこが違うのか?規模だって、決して大きくはなかった。全道統一の闘争を続けていた頃にも、もっと大きな危険と規模に膨れ上がったこともある。
 柿崎から初めて聞いたこの『信念』は、新田にとっては意外な言葉だった。
「俺たちみたいな半端もんに、どこまで本気で、そしてどこまで必死で、奴らが出てくるのか知りたかったのさ。」柿崎はもっと細かな事情を頭の中に思い浮かべていたが、極端すぎるほど端折って言った。
「まあ、結果はこの程度だったけどな。」
「・・・。」新田は黙って聞いている。
「頭か年長者を抑えてしまえば、それで一件落着。続く若い奴らは、そいつらが別の機会に暴れたときに改めて捕まえに行く。」
「・・・。」
「俺たちが定期的に暴れねーと、あいつらも仕事に困るってことらしいな。」少しふざけた様に柿崎は笑みを浮かべた。」


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2009年08月09日

5.別離(3)


 乱闘後の取調べで、柿崎を含む幹部5名は完全黙秘を続けた。
 ただ、現行犯で同時に捕まった15名の中から数人が僅かに口を割り、翌朝までに15名が検挙された。
「俺たち5人だけ捕まれば充分だったんだがなぁ。他の奴らは、無駄に割を食っただけだからな。」柿崎の顔が、少し残念そうな表情に変わった。
「ばらしやがって・・・!」小さな声で、新田が言った。
 それを聞いて柿崎は、
「口を割った奴らのことは不問だぞ。絶対に手を出すな。他の奴らにも伝えておけ。」と、めったに見せないような恐ろしい形相で新田を睨んだ。
「もし奴らに手を出したら、お前ら全員が信念の無さをさらけ出すことになるからな。」
「柿さん・・・。」
「もう来るな、ここには。お前は自分の信念を見つけろ。そしてできるだけ上に行って、そこから下を見てみろ。いいな、俺がいつもお前に期待していたことはそういうところだ。」


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