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2009年08月19日

11.獅子と老獪(1)


 次の日の月曜日、現場作業が終了した夕方に、ガレージ内の休憩コーナーにメンバー全員が集まった。
「いまから1年、モータースポーツ部門を新設してクルマ好きのお客さんにサービス提供するビジネスをトライしてみたいと思うんだ。どうだろう?」柿崎が、全員に向かって提案した。
「どのくらいニーズがあるかだなぁ。企業向けビジネスじゃないから、大口契約は期待できないしね。サービスのポイント、お客さんが期待しているリターンが一体何なのかを早く見付けていく必要があるね。」長谷が言った。
「大学生向けの安価な走行会やレースイベントでそのあたりを探ってみるってのはどうだろうね?」ジンが提案した。
「特に反対意見が無い様なら、ジン、モトハル、龍の3人でプランを練ってみてくれないか?可否は気にせず、とりあえず1ヶ月を目途に考えられるプランをまとめて皆に紹介してくれよ。」柿崎はそう言うと、続けて、
「そのプランを元に、もう一度皆で集まって実現可能なものに落とし込んだり、絞り込んでみよう。」
「龍が得意そうな仕事だから、期待してるよ。」モトハルが新田の肩を叩いた。
「いや、龍は走らせておく方がよっぽど役に立つかもよ。」ジンが本心から言った。
「そうだな。龍、何かドラテクを手軽に身に着けられそうな方法も考えてみようよ。お客さんにとっても良いサービスになりそうだし、テストドライバーとしておまえ自身がレベルアップするのにも役立つだろ?」長谷が付け加えた。
「オレがテストドライバーになるって、もう決めちゃってんの?」新田が、呆れた表情でメンバー達の顔を見回した。
『こりゃ柿さんと長谷さんとで、裏で既に手を回してるな・・・。』新田は深みに追い込まれないようにどうにかしないと・・・と、警戒感を強め始めていた。


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11.獅子と老獪(2)


 珍しく柿崎は1人きりで東京へ出張した。東京出張所にも立ち寄り、3日後に札幌に戻って来た。
 今回の出張の大きな目的の一つは、赤丸自動車会長、古出善九郎に会うことだった。古出善九郎・・・。新田が筑波サーキットで会ったあの老人だ。
 古出善九郎も北海道出身だ。ちなみに現在の国土交通省大臣で、今後の政局でも重要なポストが期待される古出剛児は、善九郎の次男で北海道1区選出の衆議院議員だ。
 善九郎自身も赤丸自動車の会長職として現在のようにのんびりと過ごすようになるまでは、中央政界に名を馳せ、官房長官として、政界のご意見番として、そして政界の長老として、長く衆議院議員を務め上げてきた。
 そして善九郎が最後の衆院選に臨んでいたときに、柿崎が善九郎の選挙事務所に1人で乗り込んで行ったことが二人の出会いとなった。
 柿崎はたった一人、特攻服を着込んで、選挙事務所のスタッフらの制止を振り切って、夕方過ぎの善九郎の札幌事務所にズカズカと乗り込んで行った。
 偶然、善九郎も選挙事務所に戻って来ていて、ソファーに座って談笑しながら、一日の疲れを癒すようにのんびりとお茶を飲んでいた。
 善九郎の取り巻きを振り切り、押しのけて、いきなり特攻服姿の柿崎が善九郎のすぐ目の前に仁王立ちになった。
「首相になって、これをやってくれ!」ドスの効いた声で、柿崎は善九郎に向かって言うと、A4用紙3枚をホッチキスで綴じた書類を善九郎の目の前のテーブルに置いた。
 この間、数秒だったろうか・・・。周囲の人間は氷のように固まっていた。その固まりが緩み始める直前に、
「ほお・・・。」と善九郎が微笑んだ。


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posted by 北乃 道晴 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 11.獅子と老獪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

11.獅子と老獪(3)


 柿崎が持ち込んで善九郎に渡した書類は、今で言うマニフェスト原案そのものだ。
 善九郎は、特攻服姿の大柄な、まだ若い男が睨みつけるように立ちはだかり、しかも自ら作り上げたことがすぐに伝わって来るような簡素な書類を直に渡しにやって来たことに興味を持った。
 善九郎は、周囲のスタッフがこれまで見たことのないような素早さで、柿崎が置いた書類をテーブルから取り上げた。
「手っ取り早く言えば・・・」柿崎が言いかけると、善九郎はそれを制止するように左手を柿崎に向けた。そして、続けて数分ほど柿崎の書類を何度も見直した。
 それからパサリと書類がテーブルの上に戻された。
 と同時に善九郎が柿崎を見上げて言った。
「無理だな。こりゃ。」善九郎の顔は大笑いに変わっていた。
「国政のために立候補するんだろ!?」柿崎が善九郎に言い返した。
「そうじゃないよ、若いの。もう、わしには時間が残っとらん。」善九郎が答えた。
「時間が無い?そんな奴がなぜ立候補するんだ?」柿崎が両手の拳を握っている。
「おまえ、失礼にもほどがあるぞ!」ようやく選挙事務所のスタッフ達が騒ぎ始めた。


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posted by 北乃 道晴 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 11.獅子と老獪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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