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2009年08月20日

12.オーディション(1)


 日曜の朝8時。新田はジンとモトハルと三人で栃木県宇都宮市に居た。
 ただし観光などとは全く縁の無い、周囲は小山と畑に囲まれた場所だ。
 ただ、尋常ではないエンジンの咆哮がそこらじゅうから響き渡ってくる。
「いい加減にして欲しいよ・・・。」新田がムッとして言った。
 三人が居るのは日光サーキットのピットレーンだった。
 十数台の、タイヤが丸出しになったクルマがそこらじゅうに並んでいる。
「おはようございます。オーナーはどちらにいらっしゃいますか?」ジンが、スタッフジャンパーを着込んで目の前を通り過ぎようとした若い男に声をかけた。
「はい、おはようございます。えーと、ああ。コントロールタワー・・・、あそこです。あの、アフロヘアみたいな頭している人がオーナーです。」若い男は極めて判りやすく教えてくれた。
「どうも。」ジンがそう答えると三人は、数人と打ち合わせていたアフロヘアの男の元へ歩み寄っていった。
「北海道のジャパン・ビークルのものです。」ジンが、打ち合わせの会話に割り込むように声をかけた。


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posted by 北乃 道晴 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 12.オーディション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

12.オーディション(2)


「あ、お疲れ様です。」アフロヘアの男がすぐに会話をやめて、振り返った。
「ずいぶん遠くから来て頂いて・・・。柿崎社長からは一通り伺ってますよ。」見た目とは全く違う、落ち着いていて低姿勢な物腰で、アフロヘアの男が答えた。
「じゃ、あと頼むね。」今まで打ち合わせていたスタッフに素早く答えると、再びジンを見て「田村です。」とアフロヘアの男は挨拶した。
それに応えて、「花田です。彼が安川、こちらが新田です。」ジンが、モトハルと新田を紹介した。
「えーと、花田さんと安川さんが今日のオーディション運営のアシスト、新田さんがオーディション参加ってことでしたよね?」田村が一人ひとり確認するように三人を見つめた。
「ええ、お忙しいとは思いますがよろしくお願いします。」ジンが答えると、田村は、「じゃ、新田さんはあちらで受付をお願いします。お二人はこちらへ。」と言い、新田をその場に残して三人でコントロールタワー下の屋根だけのテントの下に入って行った。
「やれやれ・・・。」新田はスポーツバッグを肩に担ぎ、『オーディション受付』と貼紙がぶら下がっている別のテントの方へ向かった。
「新田です。」新田が受付で申告すると、受付スタッフが「おはようございます。じゃ、こちらがゼッケンになります。ウェアに着替えて、8時半までにあちらのマシンの周囲で待機していてください。」と指差した。
 ピットの片隅で、新田は借り物のレーシングウェアとレーシングシューズに着替えてからゼッケンを着け、同じく借り物のグローブとA級ライセンスの合宿で使ったヘルメットを抱えて集合場所に向かった。


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posted by 北乃 道晴 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 12.オーディション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月21日

12.オーディション(3)


「おはようございます。ウィンガレージの田村です。早速ですが、これからドライバーズ・オーディションを開催させて頂きます。」
 8時半ちょうどに、アフロヘアの田村がレーシングウェアを着込んだ参加者30数名の前で挨拶を始めた。
 田村が言うオーディションは、来年春から1年間、ウィンガレージがフルサポートしてFJ1600シリーズにエントリーするためのドライバー1名を選抜するために開催された。
 日本各地から、腕に覚えのある走り屋や、レーシングカート全日本クラスに参加している10代のカーターが集まっている。
 新田はそんな参加者の中で唯一の30代。最年長の参加者だ。
 合格枠は5名で、1名が資金面で全面的にサポートしてもらえるフルサポート、残り4名は自己資金を持参すればFJ1600マシンを1年間格安でレンタルしてレースに参加できるチャンスが与えられる。
 チームとしても、新人発掘とシリーズ優勝の両方を目的としているから、本来なら新田は書類選考で失格になっていても不思議は無かった。
「午前中はFJ1600に慣れて頂くために、シート合わせをしてから全員1周だけ走って頂きます。午後は、各自3周のタイムアタックを行ってもらいます。必ずしもタイムだけが合否判定の全てでは有りません。ぜひとも、自分なりの良さをアピールして頂きたいと思います。」田村の挨拶が終わると、別のスタッフが注意事項を説明した。
「皆さん、ほとんどが初体験だと思いますので、不要な破損を減らすために不要なカウル部品は外してあります。クラッシュ費用については、場合によって皆さんに請求することもありますので注意してください。」
 この点については、参加者は事前に書類で通知されていたので、別に驚く様子は無かった。
「エンジン回転数は4000以下、シフトは1〜4速までしか使用しないこと。これはモニターしていますので、必ず守ってください。また、カート経験者の方に特に注意ですが、アクセルを踏んだままブレーキをかけるのも禁止です。本番のレースではありませんから、これらの条件の中で自分のベストをアピールしてください。」
「回転数・・・?そんなものまでしっかり見ながら走れるか・・・?」新田は不安を感じた。


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posted by 北乃 道晴 at 08:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 12.オーディション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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