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2009年08月22日

13.進路(4)


 2週間後の土曜日、新田は出張で東京にいた。
 木曜の昼から東京出張所の吉森の元で営業回りを行い、新規取引候補先との契約内容に関する議事録を纏め上げては、すぐに柿崎に送る作業を続けた。運良く2件の新規取引候補先が本契約を望んでいることまで確認出来た。柿崎からも、吉森の判断にすべて任せると即答を返してきた。必要があればスタッフを増員することも視野に入れようとも言ってきた。
「さすがに龍だ。この手の仕事は、お前と一緒だとずいぶん効率が上がる。」吉森は、予定していた仕事を全てやり切ったと言う満足した表情で言った。
 二人は東京出張所の事務所で、机に座ったままタバコを吸っていた。
 サカキとホトヤマは契約先のガレージで現場作業を行い、そのまま直帰した。
 すでに深夜の2時。
 新田もあくびが止まらなくなっていた。
「俺んち泊まって行くだろ?」吉森が聞いた。
 木曜、金曜と2日続けて吉森の家に泊めてもらったが、今日は土曜だ。さすがに家族水入らずにさせてやりたい。
「いや、今日は遠慮します。明日は朝から久しぶりに学生の頃の友人に会う予定ですし、折角ののんびりした週末を邪魔したくないですよ。」
「遠慮するな、朝飯くらい食べてってくれ。うちの家族も、お前との話が好きなんだ。な、今日も必ず連れて来いってカミさんに釘を刺されてるから。」
 吉森の奥さんは、柿崎に似た魅力を備えている。その奥さんが、こんな遅くでも連れて来いと言っているとしたら、断る方が野暮だ。
 後輩の新田は、先輩の吉森に従った。


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13.進路(5)


 翌日は早朝から吉森の家を出て、大学時代の友人と会って昼まで過ごした。
「経産省辞めて、北海道に居るんだって?お前、司法試験も合格してなかったっけ?」友人が不思議そうに新田に尋ねた。
「そんなこともあったな。司法なんて、興味ないよ。」さすがに新田も苦笑いした。
法学部出身の新田だが、法律の無慈悲さと、バカにしたような屁理屈がどうしても肌に合わなかった。
 時代錯誤な法律や法解釈が厳然と現代に受け継がれ、いまだにそれを守り抜くこと執着している法曹界。
 法律家どころか実務家も、建前論を如何に相手に押し付けていくかばかりに終始し、現場に立たずに小さな部屋で書類だけで結論を出そうとする傾向が強いあの雰囲気が、新田にはどうしても受け入れ難かった。
 三回生の時に司法試験に一発合格したが、司法修習生になることはなかった。
 やむなく四回生で国家公務員試験に合格し、そのまま経済産業省に入省した。
「話ってなんだ?」新田が友人に尋ねた。
「外資なんだが、韓国財閥系企業が日本法人を立ち上げる計画でね。その副社長人事で適任者を探しているんだ。」新田の友人は、外資側に立って日本企業とのM&Aを請け負うコンサルティング会社で企画部を取りまとめている。


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posted by 北乃 道晴 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 13.進路 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月23日

13.進路(6)


 今回の顧客企業の事業規模を考えると、顔が利くだけでなく、実際に野心的な事業展開をプラン・実践できる人材が欠かせないと考えている。何せ、運用可能な予算規模は日本企業のそれをはるかに上回っている。そして、若いリーダーを求めていた。
「かなり癖があるが・・・、それを除けば抜群に最適な人材が居る。」と新田の失脚を思い出した。
「どうだ、少し気分転換したんだ。そろそろ現場復帰してもいい頃なんじゃないか?」友人は新田にそれとなく切り出した。
「いい話だな。良くおまえ自身が立候補しなかったな?」新田が笑った。
「そりゃ無理だって。国際問題を実務で経験していると言ったら、お前が一番適任だからな。」同期の中でもかなり調べまわったが、新田ほどの無茶をしていた者は居なかったと笑われてしまった。
「わかった。いずれにしても急な話だし、向こうの意向もあるだろう。とりあえず頭に入れておくよ。」新田は答えた。
「猶予は半月。それまでに決断しておいてくれ。」友人はきっぱりと伝え、新田もそれを了解した。
『まだ、オレなんかを見ていてくれる奴がいるんだな・・・。』新田は、少しだけ感謝を感じた。もちろん、友人にとって大きなメリットがあるからこその話だったわけだが。それでも、頭の片隅に思い起こしてくれるだけでも有り難いものだなと感じた。


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