モータースポーツ 人気ブログランキングへ


<サイト内検索>



2009年08月23日

13.進路(7)


 友人と昼食を済ませると、新田はコーヒー・ショップで1人きりの時間を潰し、15時になる10分前を見計らってウィンガレージの本社オフィスを訪れた。
 渋谷駅の正面に伸びる道に沿ってしばらく歩くと、交通量が多いが人通りの少ない交差点がある。その交差点の一角に、せり出すように立っている住居用マンションの一室がオフィスだった。
「まだ前の方の面接中ですので・・・、こちらで少しお待ちください。」と、新田はオフィスの片隅に設けられた会議コーナーへ案内された。
 10分ほどして、オフィスの奥に見えていたドアから、若いカジュアルな服装の男が「失礼します。」と礼をしながら出てきた。
 そしてそのドアから「新田さん、どうぞこちらへ。」と田村オーナー本人が顔を出して手招きした。
 日光サーキットで行われたドライバーズ・オーディションの翌週に、新田は自宅宛に届けられた合格通知を受け取った。
「何でかねぇ・・・?」正直そう思ったが、とりあえず直ぐに柿崎に報告した。
「じゃ、ついでに出張を頼んでいいか?」と、オーディションの結果にはあまり興味がなさそうに柿崎が答えた。
 何せ面接は15分。その為だけに、東京まで出てくるのはバカらしい。
 オーディションの面接に漕ぎ着けたといっても、別にまだ合格が決まったわけではない。会社としても、新田としても、多少の用事があった方が時間を無駄にせずに済む。
 柿崎は新田に気を使って、あえて用事を増やして送り出してくれた。


落天rakutenの砂時計 > トップページへ


posted by 北乃 道晴 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 13.進路 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

13.進路(8)


「新田さん、私より2つ年上なんですね。34歳ですか。」田村がオーディションの申請書類を眺めながら、面接の第一声を口にした。
 田村の左右には、ウィンガレージのスタッフも同席していた。
「ウィンガレージではFJ1600シリーズへのエントリーを中心に、若手ドライバーを育成するビジネスを行っています。その一環として、勝てるドライバーを獲得してシリーズチャンピオンを何人も輩出し、私達の育成プログラムの認知度を高めるとともに育成カリキュラムのレベルの高さもアピールしています。」
 田村は続ける。
「FJ1600シリーズにチャレンジすること自体は私達のビジネスではありません。FJ1600シリーズで若手を育て上げて行くことがビジネスです。特に、FJ1600マシンを使った低コストなレーシングスクールがビジネスの中心になっています。」
 新田は田村の話を静かに聞いている。
「今回のオーディションは2つの意味があります。一つは勝てるドライバーの獲得です。先ほど申し上げたとおり、私どもの育成プログラムを経た若手ドライバーがシリーズを通して優秀な成績を上げた・・・というPRをするためです。」
 半分詐欺だな・・・と、新田は腹の底で答えていた。
「そして、もう一つ。残念ながら現段階では技術的には未熟でも、趣味ではなくプロになるという高い意欲を持ち、そのために全力を傾けられるドライバーを見い出すこと。私どもがビジネスとして一番力を入れているのが、この、大化けするかもしれない未熟なドライバーの発掘と育成です。」
『速いドライバーを見つけておきながら、それよりも未熟なドライバーを育てる・・・?ビジネスとして何処にキャッシュポイントを置いているんだ・・・?』新田は自分の面接のことよりも、ウィンガレージのビジネス活動がどのように利益を生み出しているのかに興味を感じた。
 ここで田村が少しだけ躊躇して、新田の目を見た。


落天rakutenの砂時計 > トップページへ


posted by 北乃 道晴 at 17:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 13.進路 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

13.進路(9)


「正直なところ、あなたが今回私どものフルサポート・ドライバーになれたとして、その先のことをどうお考えですか?」
 新田は逆にためらうことなく答えた。
「仕事の一環として考えています。」
「仕事?ジャパン・ビークルさんとしての仕事・・・ですね?」田村が聞き返した。
「ええ。」
「では新田さんの仕事として、FJ1600に乗ってどのような結果を得る必要があると思っていますか?」
「やはりアピールできる結果、実績を残すことです。極端な話をすれば、来年初めてFJ1600シリーズにチャレンジして、そのまま年間チャンピオンになる・・・そんな結果が残せたら理想的でしょうね。」まるで他人事のように新田は言った。
「新田さんは、ジャパン・ビークルさんでモータースポーツ部門のとりまとめ役にでもなるんですか?」田村が質問を続けた。
「いえ、特に決まっていません。会社の方針次第ですが。」新田は見習いのような現在の立場を自覚している。
 田村は「新田さん個人としてはどうしたいですか?」と聞いた。「要するに、あなたはレースをしたいですか?」と。
 田村の左右に座っているスタッフも、やる気のない受け答えに終始していた新田がこの質問に答えられるだろうか?と、僅かばかり興味を持った。
 が、新田は全く窮することなく即答するように口を開いた。


落天rakutenの砂時計 > トップページへ


posted by 北乃 道晴 at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 13.進路 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




楽天 ネックレス
エコバッグ
エルメス
ヘヴン ← H21日本文学館出版大賞ノベル部門特別賞
モータースポーツ 電動レーシングカート

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。