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2009年08月23日

13.進路(10)


「F3で各国のシリーズチャンピオンになると、スーパーライセンスの発給資格が得られるそうですね?」
 意外な返答に田村がたじろいで「ええ。」とだけ答えた。
「40歳までにF1のシートを獲得したいと目論んでいます。」新田がつらっと続けた。
「その先は・・・?」田村が続けて聞いた。
「50歳まで・・・、いや、走れるだけF1で走り続けてやろうと思ってますよ。ええ。」
 田村は新田がふざけていると思っていた。いや、この発言はふざけて答えているべきだと思いたかった。だが、何故か田村は新田の本音が何処にあるのかを判断しかねていた。
「今のF1の現役世代と、引退する平均年齢をご存知ですか?」思わず田村は新田に確認した。
「ええ、おおよそですけどね。20代半ばを中心に30前後までがベテランと呼ばれていますね。30代半ばを迎えると、少なくとも周囲の人間から引退を意識し始めるとも聞いています。」新田が答えた。
 田村はこれでようやく決心がついた。新田はふざけていると。知識は充分にかき集めている。だが、自分の身に置き換えて答えているとはどうしたって思えない。
「それが現実です。野球でも、サッカーでも、プレイヤーとしての適齢期がありますよね。」ホッとしたように田村が言った。
 すると新田は、
「勝ち続けていたら、どうなんでしょう?引退勧告するために何か手を打つってことでしょうか?」と付け加えた。
 新田のこのセリフが田村に火をつけた。


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posted by 北乃 道晴 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 13.進路 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

13.進路(11)


「世界のスポーツの中でも、モータースポーツは徹底的に最先端技術を取り入れて、高い公正性を保ち続けてきた唯一のスポーツですよ、新田さん。」田村、そして田村の左右に座っているスタッフも、新田を睨みつけていた。
 だが、新田は平然としている。
「であれば、オーナーが先ほど言われた適齢期なるものは参考にはなるでしょうけど、私の将来を予測する決定的な材料にはなりませんよね?」
 続けて新田は言った。
「田村さんは自ら現役ドライバーに終止符を打って、今、オーナーとしてレースに関わっているそうですが・・・。もし勝ち続けていたとしたら、やはり、今そこに座っていましたか?」
 田村は頭を冷やすようにオーディションの申請書類を見つめ、少しだけ間を置いてから再び話しはじめた。
「来年FJ1600でシリーズチャンピオンになったとして、その次のステップは新たに自分で切り開いて行かなければなりません。その点はどのように考えていますか?」
「それは答えようがありませんね。気持ちだけの話なら、もちろん考えていると言っても差し支えないのかもしれませんが・・・。」新田は依然として平然としている。
 田村はため息をついた。
「最後に、モータースポーツで食べて行けると考えていますか?」
 新田もふぅと息を吐き出してから答えた。
「株や外国為替証拠金取引と同じでしょう・・・。勝ち続けていられれば、イエス。勝てなければノーですよ。違いますか?」
 田村も、スタッフ二人も明らかに不機嫌な顔をしていた。
「判りました。面接は以上です。最後に、新田さんから何かありますか?」
 新田は腹の底でニヤッと笑い、冷静に言った。
「年齢的にフルサポートの対象外であれば、スクール受講のPRをして下さって結構ですよ。柿崎が私に何を期待しているか判りませんが、誰から見ても私は完璧な初心者ですからね。」
 そして頭を下げて、「面接までして頂き、有難うございました。」と言い終えると、立ち上がって部屋から出て行った。
 残された田村ら3人の面接官はしばらく黙り込んでいた。
 が、田村が取り出した書類を二人のスタッフが見直すと、困惑した表情と苦笑いが交錯した。
 そこには、『実技/No.1』と赤いペンで大きく書き込まれていた。


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posted by 北乃 道晴 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 13.進路 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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