モータースポーツ 人気ブログランキングへ


<サイト内検索>



2009年08月25日

14.画策(10)


 新田は資料も何も無く、身体一つで委員会に乗り込んで、いきなりコメントを求められている。
「当然ながら、教育に対するフィードバック、いや政策側から見ればフィードフォワードについても、積極的な議論が進められています。それも、ずいぶん以前からです。次世代を担う若者だけでなく、私達のように今の生活に慣れ親しんだ大人たちにも、新しい技術とその生活スタイルを支障なく活用することは大きな課題の一つです。」
 この委員会に参加している世代の人間ならなおさら、新技術が生活周辺に導入された時に大きなギャップを感じるはずだ・・・。委員会出席者の多くが同感して頷いた。
「ですが・・・、先ほど柿崎委員が触れておられたように、教育現場が自ら主役となり、産官を活用して新技術を理解し、実践、活用しようとする構想。これらはほとんど初期の段階でドラフトから削除されて来ました。」
 会議室が僅かにざわめいた。
「それが現実です・・・。そして、これからも続く事実です。」
 新田は淡々と話を続けた。
「ただ、先ほど柿崎委員が含みのある発言をされました。」
 再び会議室が静まった。
「『即時実施』と仰られました。これはリスクが大きい決断ですが、2つの大きなチャンスを生み出した事例が多かったと経験的に感じています。」


落天rakutenの砂時計 > トップページへ


posted by 北乃 道晴 at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 14.画策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

14.画策(11)


 一呼吸して新田は続けた。
「イニシアチブとムーブメント。この2つを起こすチャンスです。特に産業界ではイニシアチブを期待して大胆な決断をする企業が多かった。ですが、本委においてはムーブメントを生み出す点で大きなチャンスがあると感じました。」
 新田は腕時計を見て、すでに5分が経過したことを確認した。
「ぜひ再認識して頂きたいのですが、日本では、最初から実績を見せ付けられると強い説得力を感じる方が多い。国内では日の目を見なかったものが、海外で評価を受けると喜んで逆輸入を受け入れる。こんな事例を数多く、皆さんも目の当たりにして来られたと思います。」
 柿崎は眼をつぶったまま腕組みをしてピクリとも動かない。
「実現したいプランは実行してから認めさせる。これは悩ましいコロンブスの卵の問題です。日本の行政を活用するなら、結果を示してから要求を突きつける。本日は本委員会の雰囲気をこの場で肌で感じさせて頂き、『即時実施』の気概を強く印象付けられました。もしかしたら北海道独特の地方行政体質として、もっと内外にアピールしても良いのではないか?と感銘を受けました。今後の本委員会のさらなるご活躍を強く期待して、私からのコメントを締め括らせて頂きます。」
 新田の静かできっぱりと言い切る口調が止んだ時、委員会参加者の多くが、何とも言えない強い後押しを受けたように感じた。まるで生徒が教師から褒められたような心地良さを覚えた者も居た。
 ただ柿崎だけは、微動だにすることは無かった。
「あれだけわざとらしく名前を連呼されちゃぁな・・・。」柿崎が帰りの車の中で笑った。
「つい調子に乗っちゃうんですよね・・・。」新田も反省して笑う。


落天rakutenの砂時計 > トップページへ


posted by 北乃 道晴 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 14.画策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

14.画策(12)


 冷静に見れば、身内同士で褒め合っているようなものだ。幸いにも、委員会の出席者は元経産相官僚の新田が柿崎の会社で掃除係をしていることは知らなかった。
「それがプロの性ってもんだろうな。10数年続けてきたんだろ?1年、1ヶ月でも、失敗が許されない状況で何かをやり通せば、プロだと言えると思うぜ。」車を走らせながら柿崎が言った。
「まあいいさ。一度だけ、俺が何をしたいか見て貰いたかっただけだから。」
「何をしたいんです?」新田が見透かしたように言った。
「教育現場にEVカートを普及させるのさ。」柿崎が答えた
「違いますよ。その先のことです。」
「それは・・・、俺にもまだわからないよ。」新田には、そう言った柿崎が少し苦笑いしたように見えた。


落天rakutenの砂時計 > トップページへ


posted by 北乃 道晴 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 14.画策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




楽天 ネックレス
エコバッグ
エルメス
ヘヴン ← H21日本文学館出版大賞ノベル部門特別賞
モータースポーツ 電動レーシングカート

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。