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2009年08月26日

15.暗中模索(1)


 北海道の短い夏も終わり、朝夕の肌寒さが再び戻って来た頃だった。
「龍!居るかぁ?」長谷がガレージ裏にやって来て、ゴミをまとめている新田を見つけた。
「どうしました?」新田が膨れ上がったゴミ袋を持ったまま振り返った。
長谷は板についた仕草の新田を見て苦笑いしながら、「まあ、ちょっと事務所に来てくれよ。」と告げた。
「お久しぶりです。新田さん。」新田が事務所のドアを開けて顔をのぞかせた途端、事務所のソファの前に立っている男から声をかけられた。
「ああ、田村さん。先日はお世話になりました。」ウィンガレージのオーナー、田村だった。
「いやぁ、十勝のレースに来てたもので、ちょっと寄らせて貰ったんですよ。」柿崎の顔を見ながら田村が笑った。
 傍にはすでに挨拶を済ませたらしいジンとモトハルも居た。二人は、事務所の小さな回転椅子に腰掛けていた。
 十勝で東日本のFJ1600シリーズ戦にエントリーし、フルサポート中のドライバーが3位入賞を果たしたことを、田村が報告した。


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posted by 北乃 道晴 at 08:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 15.暗中模索 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

15.暗中模索(2)


「安定して結果を出されてますねぇ。」コーヒーサーバーに向かって、コーヒーの準備をしながら長谷が言った。
「おかげさまで。残念ながら、今年もシリーズチャンピオンには届かずに終わりそうですが・・・。」田村は少し物足りなさそうに答えた。
「ここ2年、シリーズチャンピオン争いに絡めないんですよね。いいドライバー達だとは思うんですが・・・。」
 なるほど・・・という表情で、柿崎は田村の話を聞いていた。
「ああ、今日はちょっと別の話があって伺ったんです。新田さん。」
 オレに用があったのか・・・と、新田はそこで理解した。新田はウィンガレージの面接の後、自宅宛で不合格の通知を受け取っていた。今回ジャパン・ビークルに田村が訪れたのはモータースポーツ事業に関する話をするためだろうと、事務所のメンツを見て思い込んでいた。
「1ヶ月ほどイギリスへ行きませんか?」田村が新田に言った。
 想像もしていなかった話題に、新田は突然重たい荷物を背負わされたような気がした。
「1ヶ月も・・・ですか?」


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posted by 北乃 道晴 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 15.暗中模索 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

15.暗中模索(3)


 柿崎は新田に視線をくれることも無く田村の話に耳を傾けている。
「私は来週から行くんですが、十勝まで来てようやく決心がついたんです。」
 長谷がサーブしてくれたコーヒーを頭を下げながら受け取り、田村が続けた。
「ビジネスとしてレーシングドライバーを、いやプロのレーシングドライバーをやってみませんか?」
 それを聞いて新田は不快感を露わにしながら「何を言い出すんです、田村さん。」と切り返した。
「私は今すぐにでも現金が手に入らなければ、家族を養っていけないんですよ。そんな、モノになるかどうかも・・・いや、まるきり夢みたいなことに付き合うなんて、15年前の僕だとしても遅すぎますよ。」
「先日の面接でお会いした新田さんのセリフとは思えませんね。」田村は笑った。
「私も仕事としてオーディションに参加しましたからね。立場でモノ言いを使い分けるのは当然でしょう。」
「それでしたら、発言に対する責任も充分理解していらっしゃいますよね?」田村が冷ややかに言った。
「ええ。」自信をもって新田も答えた。


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posted by 北乃 道晴 at 17:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 15.暗中模索 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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