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2009年08月27日

15.暗中模索(10)


 週末、フォーミュラー・ルノーを使った卒業レースが行われた。
 シルバーストーンサーキットを使い、出走台数20台、周回数15周で行うショートレースだ。
 参加マシンが一列になってピットレーンに並び、ローリングスタート開始の合図を待っている。
「正直驚いたね。今までレースらしいレース経験が無いって言うのも信じられないよ。」新田が乗り込んでいるマシンを見つめて、エマーソンが田村に話しかけた。
「僕は彼に何かもの凄く強いモノを感じているんだ。だけど・・・、判らないんだ。」田村がエマーソンに聞き返した。
「プロレーサーとしてやって行けるのか・・・が。」
 エマーソンは新田のマシンを見つめたまま、
「技術、スピリット、もちろんセンス、全てに申し分の無い天賦の才があると思うよ。多分ね。ただ、問題は・・・。」と表情も変えずに答えた。
「やっぱり年齢かい?」田村がハッキリした答えが欲しいという思いで聞き返した。
「まあ、それもそうなんだろうけど・・・。強い運・・・を引き込めるかどうか、これが問題だと思うね。」エマーソンが田村に向かって言った。


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posted by 北乃 道晴 at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 15.暗中模索 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

15.暗中模索(11)


「それ、僕がスクール生としてここにきた時にも言ってたね。」田村はかつての自分の姿を思い出した。10年前、FJ1600参戦4年目のシーズンを前に、結果が出せない理由を探しに田村はここシルバーストーンのレーシングスクールに参加し、エマーソンに師事した経験がある。帰国後、田村自身が驚くほどの好成績を毎レースで獲得し、その後メーカーのバックップを受けながら短期間にステップアップして行った。レーシングドライバーとして最後のキャリアは、月産自動車のワークスドライバーとして日本スーパーGTシリーズの2年連続シリーズチャンピオンとして終えた。残念ながら2年連続チャンピオンになった後の2年は、若手の台頭によって入賞機会もほとんど得られなくなっていたが。
「ああ、そうだ。ここに来る生徒には皆に言っているんだ。結局、最後はそれに尽きるって。タムーラ。」
「やってみなけりゃ判らない・・・か。僕が知りたかった答えは本当にそれなのかな?」納得できない気持ちを抑えて田村は呟いた。
 ピットレーンからフォーミュラ・ルノーが続々とコースインし始めた。ペースカーを先頭に20台のマシンがウェービングしながらコースを周回し始める。
 ペースカーのすぐ後ろ、スクール生のポールポジションは新田だ。
「運の強さの片鱗を見分けられる方法は無いのかな・・・。」そんなものはある訳が無いことを知りながら、それでも田村は思った。
「タムーラ。ハッキリしていることは、夢を掴んだ奴らは、結果が出るまで諦めずに続け切った人間だけだよ。」
「エマーソン。そんなの当たり前じゃないか。結果論に過ぎないよ。」田村はため息混じりに言った。
「そうさ。だからタムーラ、お前はレースを辞めて、ここでこうして見ているんだろ?」エマーソンはいたって真面目に答えた。
 ペースカーがピットレーンに戻ると同時に、卒業レースがスタートした。


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posted by 北乃 道晴 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 15.暗中模索 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

15.暗中模索(12)


 卒業レースにエントリーできたスクール生の9割は、トップフォーミュラ、すなわちF1に絶対上り詰めると言い切った若者ばかり。
 だが、新田はエマーソンに「成るようになる・・・。今はそうとしか思えない。」と答えた残り1割のスクール生の1人だった。
 いきなり2位以下を引き離す新田のマシン。明らかに、他のヤングライオンたちよりもクレイジーな走りを見せ付けている。だが、何故か田村は新田の走りに物足りないモノを感じていた。
「ここで勝ったからと言ってF1チャンピオンになるどころかF1のシートを獲得できるわけでもない。逆に、ここで最下位だったからと言ってF1チャンピオンになれないと決まったわけでもない。」エマーソンがレース中のフォーミュラー・ルノーを眺めながら言った。
 ゴールした時、新田は2位以下に半周以上の大差をつけて優勝を決めた。
 ピットに戻って来た新田はヘルメットを脱ぐと、
「ふぅ・・・。」と一息入れたのみで、それ以上喜びの声を上げたり、興奮した態度をとることも無かった。
「お疲れさん。」スタッフから受け取ったドリンクを田村が新田に手渡して労った。
「まず1つ目の仕事はクリア・・・出来ましたかね?」新田が少しだけ心配そうな表情を漂わせて田村に聞いた。


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posted by 北乃 道晴 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 15.暗中模索 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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