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2009年08月30日

17.決断(1)

 ジン、モトハル、ノブそしてケイゴの4人はEVカートの製作に大忙しで取り組んでいた。以前製作した5台のデモ用EVカートを試走して見出した問題点の中で、特に安全面に大幅な改良を加えて、新規に50台のEVカートを製作しているのだ。
 新田と長谷が、修理を終えた軽トラを顧客の元へ納車して戻ってきた時、柿崎がジンを手伝ってカートをスタンドに載せていた。
「さすがにこれだけ並ぶと壮観だね。」立てた状態でガレージの中に整然と並べられているEVカートを見つめて、長谷が感想を漏らした。
「あと10台・・・あ、15台か。もう少しで全部完成ですよ。」ノブの溶接作業を手伝いながら、モトハルが答えた。
「しっかし、俺たちに一番似合わない所へ持って行くんだよね、これ・・・。」モトハルが笑った。
 2台ずつ25ヶ所。
 道内の25の工業高校に、この50台のEVカートは寄贈されることになった。
 北海道知事が直接召集した「学校教育における次世代電気エネルギーの実践学習に関する諮問委員会」の次のステップに向けて、柿崎は先行的にEVカートを教育現場に投入して、1年以内に開催する競技会の結果を効果測定の結果として報告する計画を建てている。
 寄贈される25の工業高校は、柿崎の提案に共感して参加を表明した工業高校の中から先着順に選び出された。
「普通高校からも参加希望が多かったからなぁ・・・。意外と反響が大きかったのには驚いたよ。」予算の都合で50台と決め打ちして、さらに今回は工業高校に限ってと募集したのだが、結果的に100校以上の高校に柿崎は断りの返事をすることになった。
 北海道からの補助金と、柿崎が新規事業発足のためにかき集めてきた出資金をもとに、これら50台が製作され、教材として無償支給される。
「俺たちにもう少し力があればなぁ・・・。」と柿崎は残念そうに言ったが、長谷が、
「来年以降は自力で参加してきてくれる学校が出てきますって。とにかく場を提供し続けて行きましょうよ。」と慰めた。
 ちょうどその時だった。
「龍、電話!出れる?」事務所から顔を出して、トシやんが大きな声で新田を呼んだ。


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posted by 北乃 道晴 at 08:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 17.決断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

17.決断(2)


「少なくとも現地に2日・・・。一週間くらい不在ってことか。」少し考えて長谷が言った。
 柿崎は黙ったままだ。
 予定していた今日のEVカートの組立工程を全て終えてから、皆が事務所に集まっていた。
「いっそがしーな、しかし。」モトハルが呆れたように言った。
「金は出してくれるって言うんだから、いーんじゃ無いの?」トシやんが柿崎に向かって提案した。
「うちの立場としては、協力してノウハウを少しばかり学べる程度かなぁ・・・。たぶん田村オーナー、買う気だと思うな。そのチーム。」柿崎がようやく口を開いた。
「チームを買う?」モトハルが驚いて柿崎を見た。
「ああ。金が有れば俺も欲しいと思った。今。」柿崎が答えた。
「はあ・・・、凄いね。」ジンがモトハルに同意を求めるような表情で言った。
「ただ、お前が頑張らないと話が始まらない・・・ってことだよな?龍。」柿崎が新田を見た。


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posted by 北乃 道晴 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 17.決断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

17.決断(3)


「テスト合格はもとより、たった1年でレースでの結果を出さなきゃいけないって事らしいですよ・・・。」
「俺たちの仕事の範疇は超えてるぞ。」さすがに柿崎も天井を見上げてしまった。
「とりあえずテストまでは休暇扱いでいいでしょう。その先のことは、いま考えても仕方ないですよ。」長谷がフォローした。
 新田が受け取った電話口で、田村は、
「今週末、テストを受けてもらえませんか?英国のF3チームなんですけど、今シーズン限りで看板を下ろすって言ってるんですよ。オーナーが高齢で、メカニックたちも年配ばかり。いま走っている若手ドライバー二人とも、来シーズンはステップアップしてGP2に乗ることが決まってるそうなんです。それで、もしも金とドライバーを用意できるなら、あと1年はメカニックと設備全てを貸し出しても良いって言ってるんです。」と、矢継ぎ早に話し続けた。
「金に関しては私の会社から回せます。とりあえず1年分しか約束できませんけどね。来年のシーズン次第で全てが決まります。もちろん今回のテストで、チームが新田さんを認めたら・・・の話ですけど。」
 F3。F1への最短ルートに、レース経験が無いどころか、国内A級ライセンスをつい最近取得したばかりの人間がチャレンジできるチャンスが転がってきた・・・。
 だが、一度足を踏み込んでしまったら・・・。
 田村は提示された年間予算5000万円を必死でかき集めたらしい。FJ1600に資金提供してくれているスポンサーだけでなく新たな会社にも売り込み、「ヨーロッパF3までステップアップできるレーシングスクール」として事業拡大できる最良のチャンスだと説得したと言った。
 田村の熱意と、これまでの実績を知っている多くの企業が少しずつ資金を提供してくれた。もちろん、田村にとっても大きな博打に打って出る心情だろう。


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posted by 北乃 道晴 at 17:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 17.決断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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