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2009年08月31日

18.挑戦(1)


 ロンドンの東側郊外に古城を改造したガレージを見つけたとき、新田は急に緊張感に襲われた。
「来てしまったな・・・。」
 出迎えた田村は、「ここまで歩いてきたんですか!?」と呆れていた。
 最寄り駅からこのファクトリーまで、歩くと1時間はかかる筈だ。それも少しばかり小高い丘陵の頂上にある。
「おかげで近所の様子を観光して来ることができましたよ。」と、新田が引きつったように笑った。
「この城、幼少の頃にはオーナーが実際に住んでいたそうですよ。今はファクトリーとしてしか使っていないそうですが。」2日ほど早く乗り込んでいた田村が、新田を案内しながら幾つかの情報を簡単に紹介してくれた。
 そして、F3マシンが並ぶガレージの前まで着いた時、ガレージがすっぽりと納まっている城全体を眺めながら、
「この城の裏に何があると思います?」と田村が嬉しそうに尋ねた。
 すでに城の雰囲気に圧倒されていた新田は、
「さぁ・・・。」としか答えようが無かった。


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posted by 北乃 道晴 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 18.挑戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

18.挑戦(2)


「オーナー達はこの中のオフィスで待ってます。」そう言いながら、田村はガレージの右手にある古めかしい大きなドアを押し開けた。
 そして、
「せっかくだから、先に城の裏を見てからオフィスへ行きましょう。」とオフィスへ繋がる廊下を通り過ごしながら、田村は新田を城の裏庭まで連れて行った。
「ほら、どうです?」廊下を通り抜けて再び大きなドアを開くと、田村は新田をドアの先へと送り出した。
「はぁ・・・!」
 思わず声を漏らした新田の目の前には、美しい芝が敷き詰められた広大な庭園と・・・その中に模様を描くように敷設されたアスファルトのコースが広がっていた。
「自前のサーキット・・・ですよね?」新田は目を奪われたまま田村に尋ねた。
「そう。少し小さいですけど全長2.5キロくらいあるそうです。コース幅も本格的でしょ。」田村が、まるで自分のサーキットのように自慢した。


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posted by 北乃 道晴 at 17:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 18.挑戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

18.挑戦(3)


「ようこそ、ニーダ。」オフィスに案内されると、田村に紹介された車椅子の老人から新田は声をかけられた。
「はじめまして、ロンバルディ侯爵。」新田もすぐに挨拶を返した。
 車椅子の老人こそがこのファクトリーのオーナーだった。
「はは。今となっては名ばかりの公爵だがね。」ロンバルディは子供のように笑った。
 オフィスには新田、田村、オーナーのロンバルディの他に、3人の男が同席していた。
「ジェームズ・ワッツ。マネージャーだ。」小柄だが痩身で眼光鋭い白髪の老人が、座ったまま手を上げて挨拶した。
 そしてワッツは、隣に座っている小太りの中年男を横目で見ながら「彼がチーフエンジニアのエドモンド・ボックスフォール。」と紹介した。
 ボックスフォールは温厚な笑顔で新田を眺めていた。
「それとチーフメカニックのトマス・マテソン。」紹介された2m近い身長の大男が、新田に対して気さくに握手を求めてきた。
「タムーラ、テストは予定通り明日行う。もし今から練習走行する気があるなら、マシンを貸すよ。トマスが面倒を見てくれるだろう。」と、ロンバルディが穏やかに言った。
「全くの初心者だと聞いているからね。ニーダ。」
 英国F3のインターナショナル・クラスにエントリーするには、最低でも国際B級ライセンスを所持していなければならない。新田の場合、日本の国内A級ライセンスしか所持していないため、日本選手権(全日本選手権あるいは地方選手権)のレースで最低5回は完走して、順位認定を受けなければならない。
 簡単に言えば、全日本F3選手権(F3)、フォーミュラ4地方選手権(F4)、フォーミュラJ1600(FJ1600)、ツーリングカー選手権のいずれかで、5回以上の完走が必要ということだ。
 田村はその資格すら満たしていない新田を、英国の伝統あるF3チームに売り込んだということになる。今回のテストを受諾させた田村の苦労は想像を絶するモノだったろうと新田は充分に理解していた。


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posted by 北乃 道晴 at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 18.挑戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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