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2009年08月31日

18.挑戦(4)


 新田がレーシングウェアに着替えて、ピットを兼ねたガレージに入ってきたとき、サーキットの路面を初めて間近に見て驚いた。
 全てアスファルトに見えていた路面のあちらこちらに、石畳が埋め込まれていたのだ。
 新田が石畳に気付いたのを察して、田村は「あれ、かなりの曲者ですよ。」とアドバイスした。
「跳ねる、滑る、削られる・・・。気を抜いて行くと痛い目を見ますからね。」
 それに対し新田は、
「でも、好きなだけ走り込んで良いんですよね?」と、不敵な笑みを浮かべてコースを見つめていた。
 半ば呆れながら田村は、「まあ、予算内でね。」と苦笑いした。
 ちょうどその時、新田と田村が立っていたガレージの反対側で1台のF3がエンジンを始動した。
「ん?」田村が怪訝そうにそのF3のコクピットを睨んだのに新田も気付いた。
「トマス、彼は?」
 新田のためにF3の準備を始めていたトマスに、田村が尋ねた。


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18.挑戦(5)


「ああ。君達と同じテストを受ける、インドから来たドライバーだよ。レース活動を辞めようって言ってるチームをよく見つけて来るよな・・・。まあ君達もそうだけど。」
「いや、誰もここのチームが辞めるなんて信じてないですよ。今年だってシリーズ2位、5位を獲得してるし、3年前にここからGP2へステップアップしていったフレデリク・ヨハンソンは来年F1にステップアップするってもっぱらの噂じゃないですか。」
 田村は「このチーム」・・・ブリティッシュ・ロンバルディ・オートスポーツ(BRA)がレース界から撤退するという噂が本当の話だとは、今回のテストが承諾され、具体的な打ち合わせのために初めて訪れるまで信じていなかった。
 40年の華々しい歴史を持ち、かつてはF1にもエントリーしていたほどのチームだった。
 今回、フォーミュラー・ルノーの全チームから拒絶され、半ばヤケクソでF3のチームに打診をしていた。BRAはその最後の最後に連絡を取ったチームだった。端から相手にされるわけがないビッグチームだったからだ。
「フレデリクかぁ・・・。」トマスはあまり興味を示さなかった。
 インドから来たドライバーがコースインして行った。
「さて、こっちもはじめようか。」トマスが新田に声をかけた。


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2009年09月01日

18.挑戦(6)


「よーし、シートはこんなもんで良いだろ。」トマスがコクピットに収まった新田に声をかけた。
『F3って言っても、ずいぶん簡素な作りだな・・・。』新田は相変わらずレーシングカーの無駄の無い仕上がりに違和感を持っていた。外観の美しさに比べ、コクピットから見渡せるレーシングカーは、ともすれば手抜きされた太古の乗り物のようにも感じられた。
 唯一シフトレバーが、F1のようにステアリングの裏側に設けられている点が新鮮だった。
『こりゃ楽そうだ。』
「じゃ、とりあえず3周走って戻ってきてくれ。」トマスが新田に告げると、手伝っていたもう一人のメカニックがエンジンを始動させた。
 田村に渡された真っ白なヘルメットを手際よく被ると、新田はゆっくりとF3を走らせてコースインして行った。
 コース上に点在する石畳の荒れ具合は、1周目の途中まで走らせただけで嫌というほど体感できた。まだ大したスピードも出していないというのに、マシンの底が摺れ、『穴が開くんじゃないだろうな・・・』と思わず冷やりとさせられたほどだ。
 2周目の途中で、一台のF3が段違いのスピードで新田を追い抜いていった。
「さっきのインドのドライバーか・・・。」
 ともかく新田は3周を走り終えて、予定通りピットに戻った。


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