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2009年09月02日

18.挑戦(13)


「ムハンド・タクだ。よろしく。」
 シャワー室でインド人ドライバーが新田に初めて名乗った。
「リュー・ニーダ。こちらこそよろしく。」
 ムハンドは20代半ばくらいの若者に見えた。新田よりはるかに背が高く、トレーニング量の豊富さが窺い知れるほど鍛えられた肉体を供えていた。
「日本のチャンピオンなのか?」ムハンドがシャワーを浴び始めながら大声で尋ねてきた。
「いや、初めてF3に乗った。」新田もシャワーを浴びながら答えた。
 その答えが聞こえなかったのか?ムハンドはそれからしばらく返事をしなかった。
 シャワーから二人が出てきて着替え始めたとき、再びムハンドが言った。
「オレは去年、英国フォーミュラー・ルノーでチャンピオンを取ってるんだぜ・・・。」 その表情は明らかに苦々しそうだった。
 オフィスへ二人揃って入って行くと、お茶の用意が整えられていた。


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posted by 北乃 道晴 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 18.挑戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

18.挑戦(14)


「普段はこんな洒落たマネはしないんだけどね。」オーナーのロンバルディが悪戯っぽく笑った。
「まあ、そこに掛けて。」
 二人はロンバルディに従って、二つの一人掛け椅子にそれぞれ座った。
「結論から言おう。ミスター・ムハンド。来週からチームに合流できるか?」ワッツが言った。
「イ、イエス!」いきなり告げられた合格に、ムハンドは少しばかりうろたえながら答えた。
「あと1年だけ、BRAは活動を続けることになった。ただし、来シーズン限りできっぱりとチームを解散する。覚えておいてくれ。」ワッツが喜びに釘を刺すように付け加えた。
「判りました。」ムハンドも真剣な表情で返事をした。
 ワッツが次に新田に向かって言った。
「ニーダ。君はすぐに日本へ帰ってくれ。」
 新田は身動ぎすることなく、ワッツのセリフを頭の中で繰り返した。
 田村も新田の表情を見つめる以外に出来ることは無かった。
「とにかくライセンスを早く取得してきてくれ。出来るだけ早く戻って来てもらいたい。」ワッツが付け加えた。
 一瞬オフィスが静まり返った。
「やった、新田さん!」田村が声を上げて立ち上がった。
「ほっほっほぉ。そんなに驚かないでくれ、タムーラ。私達の方がよっぽど驚いているんだよ。」ロンバルディが笑っている。
 新田は全身に鳥肌が立つのを感じると同時に、気が遠くなるような気分も味わっていた。


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posted by 北乃 道晴 at 17:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 18.挑戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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