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2009年10月14日

36.永遠の日常(4)


 その日、新田は新築されたBRAのファクトリーを訪れていた。
「田村さん、ロンバルディ氏っぽく見えてきましたよ。」
 田村のオフィスに入ると、一人掛けのソファーに腰を掛けながら新田が田村を目で追った。
 田村は紅茶の用意をしながら、
「まだまだです。いや、ロンバルディ氏の様にはなることは永遠に不可能でしょう。」と背中で答えた。
 善九郎の通夜からすでに6年が過ぎた。
 新田は3年連続でワールドチャンピオンシップを獲得し、その後一度だけ2位でシリーズを終えた後、再び2年連続でワールドチャンピオンシップを獲得していた。
 昨年のF1GPからは、新田の他に2人の日本人ドライバーがフルエントリーしている。また今シーズンには、40代のF1ドライバーが3人もステップアップしてきた。
 彼ら5人のうち3人はBRA出身者だ。
「でも、ロンバルディ氏の財産は今も大きな役割を担ってくれていますよ。」トレイに載せた紅茶のセットを新田の目の前のテーブルに置くと、田村はオフィスの窓からガレージへと視線を移し、忙しそうに指揮を振っているワッツを見て笑った。


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posted by 北乃 道晴 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 36.永遠の日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月15日

36.永遠の日常(5)


「新田さんの影響は大きかった・・・。僕だけじゃなく、これだけ多くのF1ドライバーをBRAから送り出せたのは想定外でした。」
 新田は首を振りながら、
「家族はロンドンに?」と聞き返した。
「ええ。3年前からロンドンで一緒に暮らしています。僕には子供が居ませんからね、妻を呼び寄せるだけだったから身軽なもんでしたよ。」ゆっくりとソファーに腰掛けて田村が答えた。
「噂で聞いたんですけど、F1チームを買うって話があるようですね?」新田が田村の表情を伺った。
「もう耳に入ったんですか?フィオーレは相変わらず情報収集力が凄いな。まだ何も決まったわけじゃないですけど、いずれはって話はしてますよ。」田村も新田の反応を気にしていた。
「新田さんはフィオーレと長期契約の更新を断ったそうですね。」
「別に他意はありませんよ。緊張感を保ち続けたいと思っているのかもしれないけど。」新田がはぐらかすように答えた。
「全てのチームが新田さんの動向を気にしていますよ。もちろん僕らもですけど。」


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posted by 北乃 道晴 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 36.永遠の日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

36.永遠の日常(6)


 田村との話を終え、ファクトリーに顔を出した新田はしばらくワッツ、エドモンド、トマスらと談笑してからロンドンのアパートへと戻った。
「お帰り、ニーダ。」アパートではミッシェルがキッチンとデスクを行ったり来たりしながら、夕食の支度とバッグデザインを交互にこなしていた。
「相変わらず器用だなぁ。」ミッシェルの様子を笑いながら眺めた後、新田は荷物を片付けてリビングのソファーに腰掛けた。
「来月からはイベントが目白押しだからね。そうそう、1ヶ月くらい戻って来れないから、ベッドは一人で寂しく使って。」ミッシェルがキッチンに立ったまま新田に背を向けて答えた。
「何を言ってるんだか・・・。小娘さんが。」そう言うと、新田はすぐに立ち上がって部屋の片隅へと歩いて行った。
 そして、小さな戸棚に立てられていたフォトフレームを手に取り、少し懐かしい表情で見つめた。
「どうして三人一緒に写った写真が無いのよ・・・。」気が付くと新田の背中に抱きついて、ミッシェルがフォトフレームを覗き込んでいた。
 写真には、ベッドの上のあおいと、その脇に寄り添っているみくが写っていた。
「なあミッシェル。1月に日本に行ってくる。特に用事は無かったよな?」
「私に一人で眠れって言うの?」急に嫌みったらしくミッシェルが答えた。
「悪いな。」ミッシェルを背負ったまま、新田は静かに答えた。
「ううん、ごめん。少し、しつこかったね。」ミッシェルが新田の背中に顔を押し付けた。


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posted by 北乃 道晴 at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 36.永遠の日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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