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2009年10月16日

36.永遠の日常(10)


「時の砂は落ち行く・・・。放っておいても、年月だけは過ぎ去っていくからな。気負って生きる必要性の意味なんか考え始めたら、一生答えを出せずに墓に入ることになるぜ。」柿崎は新田とすれ違うような言い方をした。
「柿さん。なんだか落ち着いちゃってないっすか?」新田が気になって言った。
「そうかぁ?まあ、年齢も年齢だしな。それにお前みたいに派手な世界で生きているわけじゃないからな。それでのんびりしているように見えるのかもよ。」皮肉っぽく柿崎が笑った。
 新田は愚痴をこぼすように、
「見た目と違って、裏ではコツコツ泥臭く仕事をしてますよ。走っているとき以外は、どっかのサラリーマンと何ら替わりゃしないですよ。」と呟いた。
「龍。お前、いつかは自立して社長業でも始めるタイプだと思ってたんだけどな。俺の読みはあまり外れたことが無いんだが、お前だけはどれもこれも予想外なことばかりだった。他のメンバーも自立して行かないけどな。」柿崎は輪を掛けて嫌みったらしく言い返した。
「柿さんを見てたら、誰もあんな無茶したいとは思わなくなりますよ。みんな、柿さんの夢をかなえるって言う・・・そういう夢を見ているんだから。」
「何が無茶だよ。龍の方がよっぽど滅茶苦茶な仕事を続けてるじゃないか。正直、あおいちゃんとみくさんが去った後は、お前が追いかけるんじゃないかって妙な胸騒ぎを覚えたもんさ。」
「柿さんは生まれもって、そういう感覚で生きて来てるんですよ。俺も俺の感覚で当たり前のスピードだと思って走ってるんです。」
「ふっ、まあいいや。それより暫くこっちに居るんだろ?会わせたいのが何人か居るんだ。」柿崎が本題に入った。
「2週間は居ると思いますよ。」事務所の窓からしんしんと降り続く雪を見つめて、新田は答えた。
「じゃあ、明日中にスキーの道具を揃えておけよ。金くらい持ってんだろ?」
「柿さん、嫌な言い方しないでくださいよ。スキーか。何年ぶりかな?」
 その夜、ジャパン・ビークルのガレージにはメンバーのほとんどが集まり、鍋をつついて大いに盛り上がった。


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posted by 北乃 道晴 at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 36.永遠の日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

36.永遠の日常(11)


 2日後、新田は小学生以来の手稲スキー場に居た。ゲレンデには当時の面影はほとんど残っていなかったが、空気の味は懐かしく感じられた。
「意外とコースレイアウトは変わっていないもんですね。」スキーの金具にブーツを踏み込みながら、新田が山を見上げた。
「そうだな。オレも中学に入ってからは来てなかったからなぁ。話では色々変わったって聞いていたけど、それほど驚くような変化はして無いもんだな。」柿崎もでっぷりとした体型には変わっていたが、全ての仕草が上級スキーヤーそのものであることを滲ませていた。
「この三人がうちのカートチームの育成プログラムに参加している子供達だ。スキーでも全道ではトップクラスなんだぜ。」
 柿崎が紹介すると、中2、小6、小4の男の子達が新田に挨拶した。
「夏はカートに、冬はアルペンスキーをやってるの?こんなおじさんじゃ相手にならないだろう・・・。」新田が恐縮したように、小4の男の子と握手を交わした。
 吉森、長谷、モトハル、ジンらが、赤と青のポールをコース脇の幅の狭い林間コースにセットしていた。かつて、柿崎がコース両脇ギリギリまでコースを振ってポールをセットし、新田が常に勝ち続けていた懐かしい急斜面の林間コースだ。
「少し練習させてよ。」新田がポールセットを見下ろして笑った。相変わらず難易度の高いコース設定を柿崎が考えたらしい。
 5〜6回、新田はポールを立てたコースを滑ってみた。
 少年達はその新田の滑りを眺めていたが、
「やっぱり昔風の滑り方だな。」とヒソヒソ笑っていた。
 それを横で聞いていた柿崎は、
「少し手本を見せてやれよ。」と子供達に向かって笑った。


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posted by 北乃 道晴 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 36.永遠の日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

36.永遠の日常(12)


 コース上を通過するリフトに新田の姿を見つけると、待ってましたとばかりに子供達がコースを滑走し始めた。
 3人ともさすがに鋭い切れ込みを見せながら、全てのポールを弾いて滑り降りて行く。
 リフトから足元のコースを滑り降りて行く子供達を見つめて、
「あ、そうか・・・。今のポールって可倒式だったっけ。」と新田は気付いた。
 可倒式ポールは、新田が小学生の頃はまだまだ普及しておらず、テレビで放映されたワールドカップのスラロームで研究したくらいしか記憶がなかった。
「どうりで柔らかいと思った・・・。」
 リフトを降りて、スタートポジションへ戻ってくると、新田は、
「敵に塩を送ってくれるなんて、柿さん、まだまだ甘いなぁ。」と笑った。
 柿崎も新田に目配せしながら、新田に遅れてスターとポジションに戻って来た子供達に、
「じゃあ、タイムアタックを始めようか。」と声を掛けた。


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posted by 北乃 道晴 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 36.永遠の日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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